遠藤笹窪谷の湿地回復作業と生物相の変化

                                                   2016/3/18  岸一弘

遠藤笹窪谷は、2009年1月の大型機械による細流掘削のため、横断道周辺より谷戸奥側で谷戸底の乾燥化が進み、本来湿地であるべき谷戸底に広葉樹や乾燥地に生育する草本類が増加する状況となっていました。

そこで、2013年2月から、①谷戸底の一部掘り下げ、②広葉樹の伐採、③セイタカアワダチソウ、オオブタクサ、オオスズメノカタビラ等の外来植物除去、カナムグラ、ノイバラ等の抑制など、湿地回復作業を実施してきました。

  湿地回復作業は、生物相にさまざまな変化をもたらし、谷戸の湿地環境にふさわし動植物が復活、増加しています。

①湿地性コケ類・植物の新発見等

湿地を回復させると共に、止水域を創出するために谷戸底の一部掘り下げたことで、埋土種子・胞子の発芽が見られ、これまで遠藤笹窪谷では確認されていなかった種類も確認されています。

◆新たに発見された湿地性コケ類・植物

イチョウウキゴケ(県の絶滅危惧II)、ウキゴケ(県の準絶滅危惧)、ミズワラビ(県の準絶滅危惧)、ヒンジガヤツリ、フタバムグラ、コアゼガヤツリ

◆再発見された湿地性植物

ミズニラ(県の絶滅危惧IB)1995年3月の谷戸底埋め立て後確認できなくなっていたが、約20年ぶりの再発見となった。

②止水性トンボ類の増加

湿地の回復と止水域の創出により、止水性トンボ類が増加しています。

シオヤトンボは2002年以降確認できていませんでしたが、2015年5月30日に1♂確認することができました。個体数が増加しているのは、クロスジギンヤンマ、ヤブヤンマ、オオシオカラトンボで、ヤブヤンマは2014年9月27日に池のそばで産卵する1♀も観察されています。

③両生爬虫類の確認数増加

作業開始前にはほとんど確認できていなかった両生爬虫類の確認事例が、増加しています。

アズマヒキガエルは2012年以降確認できていませんでしたが、2015年6月27日に幼体1個体が目撃され、谷戸内で繁殖していることが確認されました。2016年3月16日には、創出した池で卵紐も確認されました。ニホンアマガエルもしばらく確認事例が途絶えていましたが、2014年、2015年には成体もしくは鳴き声を確認しています。

ヘビ類は、2013年以降アオダイショウ、シマヘビの確認事例が増え、2015年9月26日にはシロマダラ(幼蛇死体1個体)も記録されました。

④サギ類の確認数増加

作業開始前は谷戸内乾燥化と高茎外来種繁茂でサギ類の飛来は殆どなかったが、湿性改善、止水域(水たまり)の創出、高茎外来種駆除にて水生・湿地性動物を求めてサギ類が飛来しはじめています。

 資料

湿地回復作業による生物相の変化

①湿地性コケ類・植物の新発見等

2013年8月13日:池でミズワラビ6株確認

2013年8月17日:池でミズワラビ4株確認

2013年8月27日:ヒンジガヤツリ、フタバムグラ確認

2013年9月7日:池でミズワラビ3株確認

2013年9月28日:池でミズワラビ1株確認

20131123日:イチョウウキゴケ確認

2014年5月24日:池でミズニラ確認

2014年8月23日:池でミズニラ10株、コアゼガヤツリ確認

2014年9月10日:池などでウキゴケ(県の準絶滅危惧)、イチョウウキゴケ(県の絶滅危惧II) 、ミズワラビ確認

2014年9月27日:池などでウキゴケ、イチョウウキゴケ、ミズワラビ確認

2015年5月30日:イチョウウキゴケ確認

2015年8月29日:ウキゴケ、コアゼガヤツリ(多数)確認

イチョウウキゴケ、ウキゴケ、ミズワラビ、コアゼガヤツリは遠藤笹窪谷新発見、ミズニラは1995年3月の谷戸底埋め立て後約20年ぶりの再発見となった。

 

②止水性トンボ類の増加

作業開始前には個体数の少なったクロスジギンヤンマ、オオシオカラトンボの増加

2013年8月10日:池でオオシオカラトンボ♀産卵

2014年9月10日:オオシオカラトンボ♀産卵、ヤブヤンマ1♂1♀目撃(♀産卵)

2014年9月27日:池のそばでヤブヤンマ1♀の産卵確認

2015年5月30日:シオヤトンボ1♂目撃。

2016年3月26日:オツネントンボ(♀)1目撃、なんと藤沢市未記録種です。

 

両生爬虫類の確認数増加

作業開始前にはほとんど確認できていなかった両生爬虫類の確認事例が増加している。

2013年5月31日:アオダイショウ1個体目撃。

2013年9月7日:アオダイショウ1個体目撃。

2014年5月24日:ニホンアマガエル成体1個体、シマヘビ1個体目撃。

2014年6月8日:アオダイショウ1個体目撃。

2014年6月28日:ニホンアマガエル鳴き声1確認

2014年9月27日:アオダイショウ幼蛇1個体、シマヘビ1個体目撃

2014年6月28日:ニホンアマガエル鳴き声1確認

2015年4月15日:ニホンアマガエル鳴き声1確認

2015年6月27日:アズマヒキガエル幼体1個体目撃

2015年9月26日:シロマダラ幼蛇死体1個体目撃

2016年3月16日:創出した池で、アズマヒキガエル卵紐2目撃

   2016年3月26日:同上のオタマジャクシ多数目撃

 

④サギ類の確認数増加

2015131日、2016年2月25日、26日、27日:ダイサギ各1羽目撃

2015221日:コサギ1羽目撃

20151216日、17:アオサギ1羽目撃