順応的管理

 この説明は多くされており*、ここでは当方の基本的な考え方を、オピニオンの頁に掲載したものと同一内容で、ポータルサイトに載せています。

 台風が来ると気象予報士が説明すると、その信憑性はどの程度かと質問したコメンテータがいたが、言葉の使い方に違和感がある。本人は、科学技術の進歩でそれを使って、どのような結果になるか、事前に知りたかったようである。信憑性は既にある事実に対し、どの程度信頼できるかを示す人間界で使う言葉である。医学界ではこの辺の事は区別されて表現されているようである。リスク●%増えるとかの統計的表現である。純粋な科学として、事実は1つとして思い込み、罹病、完治可否いずれかであるかとは、断定していない。

 自然環境に関わっている私たちの活動の中にも、同じようなことがある。順応的管理で、毎年営巣していた野鳥が、急に営巣中止したのは、新たに行われた人の行為が影響していると推測し、その行為を中止してみた結果、営巣が再開した場合はどうでしょう。これが回復したのは人の行為を中止したためと100%証明することはできないし、また繁殖失敗と人の行為は全く関係ないとも100%証明することもできない。自然界で言える事は、そうすることで繁殖失敗するリスクを下げる事ができた(またはできる)とするのみで、上記医学界と同じような考え方である。 順応的管理とはこのようなもので、試行錯誤でよい結果を得ようとする人の知恵である。人間界の考えを持ち込み、頭の中で考えても良否は分からないのが自然界である。人間界の考え方が正しいとして、無理押しする例を見るのは、無知のみならす、恥ずべく事と思う。

 

*例えばEICネット環境用語集:「順応的管理」の説明に
 不確実性を伴う対象を取り扱うための考え方・システムで、特に野生生物や生態系の保護管理に用いられる。アダプティブマネジメント(英語のカタカナ読み)または適応的管理と言われる場合もある。
 例えば、野生生物保護管理の対象は、(1)基本的な情報が得られない不確実な系であり、(2)絶えず変動し得る非定常系であり、(3)境界がはっきりしない解放系である。そのため、当初の予測がはずれる事態が起こり得ることを、あらかじめ管理システムに組み込み、常にモニタリングを行いながらその結果に合わせて対応を変えるフィードバック管理(順応性)が必須となる。また、施策は多くの場合リスクを伴うので、その説明責任を果たす義務も必要となる。順応性と説明責任を備えた管理を順応的管理と言うが、その実施にあたっては合意形成の努力も必要となる。
 この概念は「新・生物多様性国家戦略(2002年3月)」のなかにも自然と共生する社会を築くための理念のひとつとして盛り込まれている。