止水環境創出の意義

 遠藤笹窪谷は1993年に谷戸底のかなりの部分が盛土されたことにより、

止水環境(水がたまる場所)が殆どなくなってしまいました。
 その後、流水環境に依存する生物の多くが健在である反面、 止水環境に

依存する生物が減少の一途を辿っています。
 主にカエルの産卵のために数年前に創出した止水環境をメンテナンスする

と共に、新たな止水環境を創出することで、激減した止水性生物の個体数

回復や成虫が飛翔力を持つトンボ類などの発生が期待されます。

 

1.個体数の回復や復活が期待される生物
 1)両生類
  

  a.アズマヒキガル
  3月ごろ、冬眠から覚めた成体が池や水たまりに産卵し、幼生期

(オタマジャクシ)は止水域で生活します。5~6月に幼体(子ガエル)

となり、上陸します。遠藤笹窪谷では、2010年、2011年と盛土北側

に創出した池で産卵を確認しましたが、個体数は多くありません。

2012年は、確認することができませんでした。止水環境を増やすこと

で安定した産卵が可能となり、個体数の回復も期待されます。
 

 b.ニホンアカガエル   
  1月下旬から3月にかけて池や水たまりに産卵し、幼生期(オタマ

ジャクシ)は止水域で生活します。5月に幼体(子ガエル)となり、

上陸します。遠藤笹窪谷では、2004年まで卵塊を確認していますが、

その後は卵塊~成体いずれのステージも確認できていません。現在

でも生息している可能性はあまり高いとは言えませんが、止水域を

増やすことで生き残っていた成体が産卵してくれることを期待したい

ものです。

 

 c.シュレーゲルアオガエル   
  5月に水田や池の周辺の土の中に泡に包まれた卵塊を産み、幼生期

(オタマジャクシ)は止水域で生活します。7月ごろに幼体(子ガエル)

となり、上陸します。遠藤笹窪谷では、1995年に♀成体を確認した

後は確認できていませんが、2012年に実施された藤沢市自然環境実態

調査において鳴き声を確認したとの報告がなされており、現在でも

生息している可能性が出てきました。湿地に止水域を創出すること

で、生息環境を確保することができます。

 

 これらの両生類が増加することで、ヘビ類の個体数が増加することが

期待されます。

 

2)水生昆虫
 

   a.シオヤトンボ
   幼虫は湿田や湿地内の浅い水たまりに生息し、幼虫で越冬します。

成虫は、年1回4月下旬から5月にかけて現れます。近年確実な記録は

得られていませんが、止水域を増やすことで復活を期待したいものです。

 

 b.リスアカネ
幼虫は、池や湿地内の水たまりに生息します。成虫は年1回夏に現れ、

秋に繁殖行動を行います。越冬態は卵です。2009年に盛土北側に

創出した池で交尾・産卵行動を確認していますが、発生は不安定です。

止水域を増やすことで、安定して発生することが期待されます。

 

  c.カトリヤンマ
幼虫は、湿田・湿地、流れの滞った水路などに生息します。成虫は年

1回夏に現れ、秋に繁殖行動を行います。越冬態は卵です。遠藤笹窪谷

では、ごくわずかの成虫記録しかありませんが、止水域を増やすことで、

安定して発生することが期待されます。
 

  止水域を増やすことで、上記の種類のほか、クロスジギンヤンマ、

ヤブヤンマ、オオシオカラトンボ、アキアカネ、ナツアカネなどの

トンボ類やヤスマツアメンボ、コセアカアメンボなどの水生昆虫の

個体数が増加することが期待されます。

 

2.止水環境創出にあたっての留意点
止水環境創出にあたっては、オギ原、ヨシ原などの草地に生息・

自生する動植物の状況を事前に確認し、希少な種類が生息・自生

する場所に止水環境を創出することは避けなければなりません。
   また、水深を深くし過ぎると、ウシガエル、ミシシッピアカミミ

ガメなどの外来種を放される危険性が増すので、深くても10~

15㎝となるように配慮する必要があります。

アズマヒキガエル成体
アズマヒキガエル成体
アズマヒキガエル卵紐
アズマヒキガエル卵紐

シュレーゲルアオガエル成体
シュレーゲルアオガエル成体
シュレーゲルアオガエル卵塊
シュレーゲルアオガエル卵塊

ニホンアカガエル成体
ニホンアカガエル成体
ニホンアカガエル卵塊
ニホンアカガエル卵塊

シオヤトンボ♂
シオヤトンボ♂
シオヤトンボ終齢幼虫
シオヤトンボ終齢幼虫

リスアカネ♂
リスアカネ♂

 

 

 

 

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カトリヤンマ♂
カトリヤンマ♂
カトリヤンマ亜終齢幼虫
カトリヤンマ亜終齢幼虫