アズマネザサの刈り込みについて 

                              
 都市公園では見通しを良くする防犯上の観点や、蚊などの虫の発生を抑え
られると考えて
アズマネザサの群落は刈り込まれる事がありますが、自然環境との共生が必要な場所では、慎重な管理が求められます。

 アズマネザサの群落は全く管理しなければ林床を覆いつくし、光を必要とするその地域
本来の植物の生育が阻害され、単純な植物相になります。一方、過管理により
群落規模が小さくなってしまった場合は、その群落に依存する昆虫類、その中に逃げ込む野鳥やそこで営巣するウグイス等の鳥類、その中で越冬する生き物、生息環境として利用する小動物の生活の場を奪う事になります。貴重な植物がある場合は、誤って刈り取られるのを防ぐため、事前にテープ等で印をつけておく等の配慮も必要になります。生物多様性を保全するための

管理の基本は、環境の多様性を維持するものですので、管理する場所としない場所が常に共存している事が必要となります。その地でどのような生き物が生息しているのかを知り、保全作業でどのような新しい自然環境が出現するのかをイメージする事が大切かと思います。
 
 一度にどのくらいの規模の刈り取りを実施しても生態系への影響が出ないか、予測する
事は困難ですので、ある程度まとまった範囲を刈り残す事でリスクを回避し、その後の
状況を暫く(少なくとも2~3年)モニタリングし、順応的管理を行いたいものです。

 その中で林縁はエコトーン(移行帯)としての役割があり、その部分にも十分注意を払う
べきです。エコトーンとは異なる環境が移り変わる場所です。生活史ステージによって
生活空間を変えたり、他へ拡散したりする生物も多く、それらはエコトーンをそのための
場所として利用しています。野鳥では刈られた林床を含め、その付近で採食し、身を隠す
安全な場所としても利用しています。その結果としてその地域の種の多様性、個体数が
増える事が知られています。昆虫類、クモ類などの小動物においても、エコトーンに生息
する種類が多いことが知られています。

 谷戸側の水路わきのアズマネザサの保全はこの役割以外にも、風を簡単に吹き抜けなく
して谷戸湿地部の乾燥化防止、大量の落葉の谷戸内への流入防止等の役割があります。
その他の林縁部では人の通路を確保しつつ、アズマネザサを刈り残す事で安易に人が立入
りづらくなり、林床が荒れるのが防止できます。また、刈り高を高くすれば、その中で
産卵や生息する生き物にも優しい管理となり、人の不用意な踏み付け防止も期待できます。

 アズマネザサに関係している具体的な生き物の一例を示しますと、林縁部のアズマネザサの保全は、湿潤な環境に生えるイボタノキに好んで発生するウラゴマダラシジミ、林縁部の高茎アズマネザサ群落に生息するクロマドボタル幼虫など生息環境を維持するために重要と考えられます。野鳥ではウソがそのイボタノキの実を好んで食べます。笹窪谷ではクロジやヤマシギが暗いアズマネザサの群落の中で越冬しています。

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